リスクマネジメントと安全教育

 当初アウトドアの危険を対象に始めた研究は、多様な方向への展開の可能性を見せてくれました。

 体験活動は、現在の学校でも最も傷害事故が起こっている領域です。だからといって活動をやめることが子どもを危険から守ることにつながるでしょうか?教育実践はそのジレンマの中にあります。その時、活動者を危険からどう守るかは、有意義な研究テーマです。

 

 危険認知は「生きる力」の教育に直結するテーマです。医療や産業の世界ではリスクは認知的な視点からも研究が進んでいますが、学校教育の現場ではまだまだこうした研究は遅れています。野外活動場面、学校体育場面、その他の実技教科など、教育的に意義はあると同時に危険でもある活動は少なくありません。そこで、子どもや教師・指導者はどの程度危険を認知できているのでしょうか。またそれをもとにどのような意志決定をしているのでしょうか??エキスパートとそうでない人の違いはどこにあるのでしょうか?認知心理学的にも興味深いテーマです。

 

 

主要著書

  • 子供たちには危険がいっぱい(山と渓谷社)2002年9月
  • 山のリスクと向き合うために:登山におけるリスクマネジメントの理論と実践 東京新聞 2015年 (長岡健一と共著)
  • 村越真(2016) なぜ遭難するのか?2012-2013 年の山岳遭難データによる疫学的分析 ヤマケイ登山総合研究所(編)登山白書2016 pp.204-210 山と渓谷社
  • 村越真(2017)「リスク科の構想:21世紀型能力を踏まえたマネジメント教育」教科開発学を創る 第1集. Pp.125-146. 愛知教育大学出版会
  • 村越真(印刷中)フィールド研究の紹介1:人は自然の中のリスクをどう認知しているのか? 野外教育学研究法 杏林書院
  • 主要論文
  • 村越真 (2006) 野外活動場面における児童の危険認知の特徴 体育学研究, 51, 275-285.
  • 村越真・小山真人 (2006). 火山のハザードマップからの情報読み取りとそれに対する表現方法の効果 災害情報,4,40-49.
  • 村越真・小山真人(2007)「火山ハザードマップの読み取りに対するドリルマップ提示の効果」 地図45(4),1-11.(2008年度の日本国際地図学会論文賞受賞(2007.12))
  • 村越真 (2010) 2007年本州中部における登山目的による山岳遭難の実態 体育学研究,55,177-191.
  • 村越真・渡邊雄二・東秀訓・高嶋和彦(2013) 2010年の登山目的による山岳遭難の実態 野外教育研究、16(1),45-56.
  • 村越真・村松由貴 (2014) 静岡県の小中学校における防災教育の実態と課題 教科開発学論集、2,1-12.
  • 村越 真、中村 美智太郎、河合美保(2014) 高所登山は「死と隣り合わせ」か:高所登山家のリスクの捉えとリスク対処方略を明らかにする 『体育学研究』, 59(2)
  • 村越真 (2015) KYTシートによる危険予知トレーニングは、リスク特定・対応スキルを向上させるか 教科開発学論集、3号、35-46..
  • 村越真・小山正人・河合美保 (2016印刷中) 地震に対する抜き打ち避難訓練は臨機応変な避難行動を促進するか?安全教育研究
  • 村越真(2017) 安全教育の課題と21世紀型能力 教科開発学論集 5,117-126.
  • 村越真 (投稿中) 登山者のリスク特定能力の実態:登山道を対象としたKYT図版による検討. 野外教育研究. 
  • 村越真・菊池雅行(投稿中)第58次南極地域観測隊員の南極のリスクに対する態度、知識、対応スキルの実態.南極資料.