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遭難統計からさらに見えてくるもの(2012年7月23日訂正版)

 PEAKSの夏山遭難対策特集の座談会に呼ばれたのをきっかけに、夏山の遭難実態を分析してみた。元データはすでに公表している2010年の遭難データだ。昨年の全遭対での発表に向けてデータを料理した時にも、「いいデータってのはかめば噛むほど味がでる」と感嘆したものだが、夏山(7,8月)に限って集計してみたら驚愕の事実。誰が、どこで、どんな遭難をしているかが、ありありと見えてくるのだ。そのデータを掲載する。なおこのデータは全て「登山」を目的とするもので山菜採りは入っていない。

 

 まず、各県の夏山遭難率を見ると、長野や静岡が圧倒的に多い。静岡はもちろん富士山。さらに60歳代の事故が多いのは全年の傾向と一致しているが、60歳の転倒は突出いる。男性はここまで極端ではないが、やはり60歳代の転倒遭難は夏場に多い。男性の場合はこれに50歳代が加わる。夏とそれ以外の季節を比較し、それを男性と比べると、むしろ女性の転倒は通年で多いとも言える。

 

 秋から冬、春にかけては低山の歩きやすいルートを中心に山登りをしている人が、「夏だからアルプスにでも行こう」と思ってでかけ、普段なれない路面でバランスを崩し、転倒する、そんな構図が見えてくる。個別のケースをみても、長野では転倒、そしてその延長線上にあると思われる滑落の多さが見えてくる。

 

 この結果から見るかぎり、悪路でのバランス維持は夏山の事故減少に大きく貢献する。身近なラフな場所で自分の力を試してから夏山に向おう。

 

 

上の段は2010年の夏(7,8月)以外。下が7,8月の夏山データ。左は女性、右が男性。このデータは全国の警察本部から筆者が独自に収集したもので、登山遭難の約8割を含む。(7月23日訂正:これまで上段のデータは2010年全データと表記していましたが、夏以外のデータの誤りでした。また集計対象のデータに誤りがあったので訂正します)。