4月9日、しらせが59次越冬隊と60次夏隊を連れて帰国した。4/10は明治記念館で恒例の帰国報告会・歓迎会が開催された。数々の成果が得られたことが報告のハンドアウトに掲載されている。その内容の多くを十分理解したとはいいか難いが、一緒に南極に赴いた隊員たちによってそれがなされたと思うと、自分がなんの貢献もしているわけではないのに、誇らしい気分になる。
ブログで前に紹介したこともあるアイスコアの掘削は、世界最古の氷の掘削に向けて、ようやく最終候補地が決まった。アイスレーダーで基盤地形図を作るために雪上車で走った総面積が1500平方kmだという。まあ所詮30km×50kmだ。大したことではない。だが、掘削開始が3年後というのに驚く。当然、データが手に入り、またその分析結果が出るのはその数年後だろう。「3000mの氷床コアを掘削すれば100万年前の氷が手に入る」原理は簡単だが、それを実現させるために、これだけの手間暇が掛かる。最近読んだ本で「(科学者の原動力は)人間の本性と世界の構造についての止むことなき好奇心」とあった。まさにその現場の片隅に自分は立ち会うことができた。
若い隊員に「成果どうだった?」と聞くと、「それが、いいデータが取れたんですよ」という答えが返ってきた。オーロラは、その原理からして南極と北極に同時に発生するのだが、オーロラ爆発と脈動オーロラが同時に観測できたのだという。それがどのくらい凄くて、既存のデータに比べてどのくらいの新たな成果をもたらしてくれるのかは、理解できないことが残念だ。素人的な目線で、その成果が世界のトップジャーナルに掲載される日が来ることを祈りたい。
訓練の時から同室で親しくしていた隊員が日々メンテナンスしていた大型大気レーダーも、大気の物質を混合させる大気中の乱流の観測に成功した。いったい、大気の何がレーダーに映るのか、そこで大気の挙動の何が分かるのか。あるいはそのレーダーはなんで、数百本の小さなアンテナから構成されているのか、その分野の素人には全く分からない。ただ僕が分かることは、その隊員がアンテナ林を日々寒冷環境下で、時には腹ばいになりながら一本一本メンテナンスすることでこれだけの成果を出したということだけである。彼の語る言葉からは、常にそのことに関わるプライドがにじみ出ている。