22.Theyは何しに南極へ

宮内隊員には、ネタがあったら写真を送ってねと依頼してあったので、何度か写真が送られてきた。10Mという月の制限の中のため、最初はおっかなびっくり解像度をかなり落とした写真が送られてきたが、月の半ばにもなると、使用量の目安が分かってきたのか、100Kを超えるような、そこそこ見られる写真も送られてきた。第三報では、なんと太っ腹に音声ファイルまで添付されてきた。

 

 しらせ艦内で流れるいろいろな放送のファイルだ。私も初めて乗った時には珍しく、いちいち動画に撮っていたりした。

 

【艦上第一報】(左上。以下**枚目は左上を基準)

 フリマントルでしらせに乗艦し、隊員の居室に落ち着いた直後の写真。寮の二人部屋みたいで、狭いながらもけっこうくつろげる。床に敷いてあるのは私から越冬隊にプレゼントしたござ。とりあえずしらせでも敷いておこうという算段のようだ。いぐさのにおいが強烈で、昭和基地に着くころにはいい具合ににおいが落ち着いているかも。

 

【第2報】(2枚目)

 「初氷山発見」のメール。高さ70m、幅500m。2つ大きな山が見えますが、その間は海面下だけでつながっています。でも、真ん中はすごく浅くて、入江のようになっている場所に波がざぶざぶ来ていてすごくきれいでした、のこと。

 

 今年は暴風圏も大したことがなかったとか・・・。船酔いを心配していた宮内隊員も、「国内のフェリーよりよっぽど揺れませんでした。最高でも8度ぐらいしか傾かなかったみたいです。ただ、2日間はPCずっと見るのは気持ち悪くなって嫌でした。艦上体育は禁止されず、外に出て走っている間がいちばん気分がすっきりしました。シーカヤックじゃ絶対無理~って海をバッサ~と走るしらせも少しぐらいは見たかったなと今になって残念に思います。」

と、余裕のコメント。

 船内ではクライマーの方と一緒に身体を鍛えているようです。(3枚目)

 

【第三報】(4枚目)

 オーストラリアを出て10日ほど、ヘリの活動が始まったようです。いつもの隊であれば、12/20ごろが第一便出発ですが、今回は、「しらせを機動的に活用して」途中のトッテン氷河という大氷河周辺での海洋観測を大規模に行うようです。従って、早くからヘリを使うようですが、昭和基地到着はまだまだ先(1月5日頃)。

 

 温暖化で、南極の氷が溶けたら海水が50mほど上昇するとされていますが、南極の氷が溶けるメカニズムはよくわかっていません。資料映像とかでは、氷床の端が崩れて流れ出すシーンが写ります。あれは劇的なので映されるのであって、実は海水に接した氷河の底面が地味にとけている割合が多いのだとか。そんなことを確認するのが第61次最大のミッションなのです。

 

以下、宮内隊員のコメント

「2日ほど前に流氷域に入り、コウテイペンギンやアザラシ、ユキドリがたまにいます。他の鳥もいるような気がするけど、よく分かりません。そして彼らはいつも突然現れるので、まだ写真はありません。

 私の南極での活動はまだまだ先ですが、隊としては、今日の午後からヘリを使った観測が始まります。写真は観測前にヘリが確認で飛んで帰ってきたところです。ヘリが離着陸する甲板(飛行甲板)の上の階には写真や動画を撮るために人が集まっていました。

 私たちは南極に着いたらこの写真のヘリに荷物として(座席が取り外された状態で)乗って移動します。」

 

【第4報】(5枚目)

 しらせには3機のヘリが詰まれていますが、2機は自衛隊の大型ヘリ。2tを積むことができます。僕らも「荷物扱い」で搭乗です。(人扱いは、越冬隊の最初の帰艦時のみ)。

 

 残り1機は観測隊がオーストラリアでチャータする小型機です。荷物はあまり積めない代わりに小回りが利きます。観測隊ヘリが動き出したということは、観測活動が本格化したということでしょう。月末も近づき、「予算消化」とばかりに音声ファイルもついてました。

 

****以下、宮内隊員よりの報告***

今日から観測隊ヘリも動き始めました。

今はトッテン氷河という氷河に行き、現地で観測機器の設置作業をしているとのことです。

 

しらせ艦内では、放送で色々なことが伝えられます。

 艦上体育と言って、飛行甲板と、その階の甲板で運動をしていい時間帯があるのですが、ヘリが使うときには当然飛行甲板へは入れません。ランニングの向きも日によって決まっています。そのようなことも放送で伝えられます。

 

「ふたひとさんまる(2130)まで、艦上体育を許可する。ランニングは時計回り。天気晴れ、風左60度から6ノット。気温マイナス3.9度、湿度59%。艦上体育は中部より全部側で行え。」

(解説。しらせの甲板は一周約250m。通常は日の出から日没まで許可されるが、白夜では日没がないのでうしろは2130までとなる。天候や作業状況によって利用可能なエリアが制限されることがある。たとえば左舷からの風が強ければ右舷のみで行えとなる。この日はおそらく後部の飛行甲板で作業があったのでしょう。)

 

ヘリの離艦、着艦も放送で伝えられるため、タイミングを合わせて出て行けば間近で飛んでいるのを見ることもできます。

 

あと、意外だったのですが、動物がいるよ~という情報を流してくれることもあります。放送のスタイルはそのままで・・・

「 右舷、***、10mにペンギン」(泳法がバタフライと紹介されることも・・・)