利佳ちゃんから誘われて気楽な気持ちで申し込んでは見たものの、世界選手権代表選手に選ばれると、12時間という普段走り慣れない距離を走ることの身体への影響が気になる。もし自分がバリバリの現役だったら、このロゲインもキャンセルしただろう。身体に加えて、毎日8時間以上の睡眠を確保している人間が、夜通し寝ずに動き続けて、健康に影響が出ないかどうかも不安だ。
今回のロゲインの目玉は夜間のナヴィゲーション。夜22時スタートなので、4時までの約半分の時間が闇の中でのナヴィゲーションとなる。昼間のナヴィゲーションでは、吹雪や雪+霧の中で周囲が一面白に見えてしまうホワイトアウト状況でのナヴィゲーションがもっとも難しいが、夜間はそれに匹敵する、いわばブラックアウトでのナヴィゲーションである。不安もあるが夜間のナヴィゲーションは、やりなれると病みつきになる。闇の中で居場所を失ってしまうという不安、地図の情報を駆使して対応し、その不安を制御することは、昼間のナヴィゲーションにはない達成感がある。
スコア形式ではよくあることだが、地図上での移動スピードの見積もりは、細かい部分を無視して想定するので、どうしても甘くなる。この日も前半の真田市街地に降りた時点で、予想以上の時間がかかっていた。その上、パートナーの利佳ちゃんが、途中給水のため自販機で買った「桃の天然水」が合わなかったのか、腹痛と軽い吐き気を催し、ペースダウン。通過時間を計りながら、フィニッシュ時刻を推測し、そこから逆算してスキップするコントロールを決めていくという展開になった。市街地の北端付近にあるコントロールのうち点が比較的高かった2つは状態を考えるとスキップをせざるをえない。
最後の2時間は、だらだらと登る国道の路肩を、あちこちに痛みの出た脚をたたきながら、登った。このペースでは時間をオーバー、大幅な減点は免れないだろう。だとすると、1分30点だから、34点のコントロールでさえ1分強の時間がかかるなら、損になってしまう。34点のコントロールのスキップを利佳ちゃんに提案すると、「そんなの嫌!それなら私走る」と言い出した。二人で走ってみると、そこそこのペースで走れたのは驚きだった。むしろ歩いているよりも楽なくらいだった。中盤は基本的に歩いていたから、違う筋肉を使うランが楽に感じたのだろう。
結果的には、ほぼ途中のスキップ分1位に足りない3位であった。世界選手権を控える身には、これくらいが穏当だろう。