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シンポジウムその後

 トムラウシ遭難のシンポジウムを開催した日本山岳サーチ&レスキュー研究機構のMLでは、シンポ後も参加者の意見交換をするメールが続いている。会場の雰囲気と同じように、パネリストたちの多くも、(もちろん、ツアー会社とガイドの問題は最大の事故要因だが)、参加したツアー客(あるいはその背後にいるであろう一般登山者)のあり方がこれでいいのだろうか、という思いを共有したようである。

 

 溝手さんが言うように、法律的な義務とは別に、やはり自然の中に入るものには「自分の命を守る」という意識が必要だが、それが完全に共有されているようには思えない。ぼくはシンポジウムの中で、かなり執拗にツアー会社の立場として参加している黒川さんに「客から、旅程保証の面でクレームを受けることはないのか?」と問いただした。黒川さんはいいにくそうにしながらも、「確かに一般論としてはあるが、それは安全第一だ」と答えた。その時フロアからは、「それはきれい事で、私はガイドを務めたこともあるが、金返せ(という言い方ではなかったが、そのような主旨のこと)と言われたこともある」という発言が出た。それは一部の事例かもしれないが、実はそれこそが、僕がシンポジウムで聞きたかったことでもあった。そういうツアー客が一部でもいる時、果たして「停滞する」という選択がガイドに容易にできただろうか?

 

 ガイドやツアー会社がけしからん、「ありえない」というだけでは事故は決してなくならない。壮大な構想に見えても、こうした社会的背景に働きかけない限り、事故はいくらでも続く。