はやぶさ2

 

 小惑星からたかだた数個の砂粒を持ち帰ったはやぶさの何がそんなに凄いのか?かなり懐疑的な気持ちで「はやぶさ」の映画を見に行ったのですが、すっかりJAXAの思惑に載せられてしまいました。数億キロ先にある小惑星に到達するのは、ナヴィゲーションという視点で言えばとてつもない精度です。それを満身創痍の推進系で成し遂げたはやぶさには心の底から感動し、大気圏突入で燃え尽きるシーンでは眼が潤んでしまいました。その後継機はやぶさ2が目標とする「りゅうぐう」まで後1年というニュースが流れていました。

 

 ほんとに、JAXAはPRがお上手。はやぶさ2が打ち上げられたのは2014年12月。2年半ほど飛んで、残りが1年。往路の行程だけでも30%以上は残っているのです。なんだ、まだ成果は海の物とも山の物ともつかないじゃないか。

 

 そのはやぶさ2の課題はやはり航法。今回も衛星の画像をもとに小惑星との位置関係を把握する光学航法やらレーザー測量で小惑星との距離を把握する装置やら、とにかく、近づいた時にりゅうぐうの様子を知る観測機器を沢山搭載しているようです。紹介している科学者がりゅうぐうの模型を示して、「これがりゅうぐうのだいたいの形です。というか、私たちはりゅうぐうについてこの程度のことしか分かっていないのです」と語っていました。だから、りゅうぐうの表面がでこぼこなのか岩が多いのか斜面がどうなのかといったことも分かりません。急斜面だったり岩が多かったりしたら、そこに着陸すると、機体損傷の恐れがあります。だから現物を見ることができない(そして光学装置で見たとしても数分(?)のラグがある映像しか地球で見ることができない)着陸地点の選定は、はやぶさ2成功の第二のハードルと言ってもいいのでしょう。

 

 「安全なところを選んでしまえば、科学的に面白くない場所を選んでしまうかもしれません」と、はやぶさ2に関わる別の科学者もコメントしていました。なんだか南極観測も一緒だなあ・・・。はやぶさなら、数百億円(?)の機体が壊れてしまっても人命には影響ありません。しかし、人間が直接データ収集にあたるフィールド科学では、科学者の知的探究心は時には安全と相反する事態を引き起こす可能性もあります。

 

 あるフィールドアシスタントの方が次のように語っていたことがあります。「時間だからもう調査止めて帰りましょう、これは絶対言わないことにしてました」それは、時には研究者をよりリスクの高い状態に置くことにもなります。一方で、そんなFAのアシストは、世界で初の鉱物の発見につながりました。「安全が第一」もちろんその趣旨に相違はありません。しかし、その意味をより深く吟味することが安全と科学的意義のジレンマを乗り越える鍵になるのかもしれません。