氷床コアの掘削の計画を語るリーダーの河村さん。こんな感じで氷床の下の岩盤の地図をつくる(らしい)。
銀座のバーにいくと南極の氷が入ったオンザロックが5000円もするらしい。銀座のバーには行ったことがないので、ほんとのところは分からない。昔から聞く話なので多分ほんとなのだろう。なぜ、そんなに珍重されるのか?そこには南極の氷の成り立ちが関係しており、日本の観測隊の4つめの基地ドームふじが作られた理由が隠されている(ちなみにここは南極料理人の舞台でもある)。
日本の南極観測には4つの基地がある(あった)。おなじみ昭和基地は1957年にスタートし、今年の1月には60周年記念が行われた。その他にみずほ、あすかという内陸の基地がある。いずれもとってもジャパニーズな命名である。南極料理人の舞台ドームふじは、ドームとよばれる南極大陸の高原上の頂上部にあり、昭和基地から1000kmの南極点寄りにある。標高は3800m、富士山よりも標高が高いのだ。いつでも高地トレーニングだ。3800mのうち氷の厚さが約3000m、地面(氷面)の下はず~っと氷なのだ。基本的に最高点では氷が流れにくいので、氷がたまりやすい。だから氷床も厚くなっている。
これらの氷は言ってみれば氷河である。普通の氷が水を凍らせてできるのに対して氷河は雪が積もってできる。溶ける前に新しい雪が降れば、古い雪は圧雪され、次第に氷化する。それが気の遠くなるような年月繰り返されてできたのがドームふじの3000mの氷なのである。氷の元は雪なので、できる時に周囲にある空気を巻き込んで氷になる。だから南極から持ち帰った氷には小さな気泡が沢山含まれ、白っぽい。それが溶ける時にぷちぷちと小さな音がして、そこから太古の空気が蘇るのだ。うーん、ロマンチック!それこそが南極氷オンザロックが珍重される理由だろう。
氷が古ければその中に含まれている空気も古い。3000m下にはおおよそ100万年前の氷があると推定されるので、空気も100万年ほど前のものとなる。つまりその空気を分析すれば、100万年前に至る大気の組成(例えば二酸化炭素の存在比)が推定できる。そこから地球の環境変動の情報も得ることもできる。言ってみれば「環境の化石」が発掘できるのだ。
ドームふじでは、すでに72万年前の氷「氷床コア」を採掘した。計画ではもっと古い氷がとれる期待があったのだが、そうはならなかった。計画が策定された当時は、とにかく深く掘れれば古い氷が得られると考えられていた。だが、実際掘ってみると、深すぎると底が地熱で融解しており、氷床コアが得られないのだそうだ。だから現在は仏・伊協同のドームCでの80万年が最古の氷である。
蓮舫さんに反論するわけじゃないが、スポーツも科学も1番じゃなきゃだめなんだ。もうちょっと正確に言えば、1番を目指してこそはじめて得られるものがある。日本の南極観測も100万年という「世界記録」を目指して今次隊から調査が始まる。といっても今年やることは雪上車にアイスレーダーをくっつけて縦横無尽に走らせて氷床の下の岩盤の正確な地図を作ること。掘削は来年以降、成果が出るのはさらにその先だろう。なんだか五輪に向けてジュニアを育成しているみたい。スポーツでも研究でも、根気強くやらないと一番にはなれないんだな。
(本稿は私の理解力で書かれていますので、部分的には不正確な部分があることをご容赦ください)。