南極で走れるだろうか?何より往路20日、復路40日というしらせ艦上で体を動かすことができるのだろうか。30年以上にわたりトレーニングを続けてきた僕の最大の懸念はそこにあった。それでも最近は週5日より多く走ることはなくなったし、2日間続けて運動しなくても我慢できるようになった。だが、20日は無理! まして40日など、体も精神もどうにかなってしまう。船の廊下をランジで歩こうか、それとも船倉から艦橋まで階段のぼりをしようか?
だがそこは長期航海をする自衛隊の艦船だ。保養室という名のジムがあって、 ランニングマシン1台、エアロバイク2台がある。自衛官170余人、観測隊60人 にはちと狭いが、午後早い時間までの自衛官の利用は少ないので、順番待ちで困るほどではない。でも、動揺する艦上でのランニングマシンは結構大変。
なによりしらせには、広い後部甲板と両舷に通路がある。外洋に出てからは毎日8:00~日没近くまで「艦上体育を許可する」という放送が流れ、走ったり後部甲板で球技をしている。前にも書いたが甲板は1周約250m。4周すると1km。甲板だけあってやや硬いのが難だが、体育館のギャラリーの走路よりははるかにましだ。30分なら飽きずに走れる。それ以上になるとイヤホンがいるが、音楽を聴きながらなら60分でもへっちゃらだ。偶数日と奇数日でランニングの方向が交互になっている。これも許可放送とともに「今日は反時計回り」と伝えられる。
12月7日には南緯50度、北半球でいえば樺太の緯度だが、天気がよいとほかほかと暖かい。天気のよい日は一度に20人以上が走っていることもある。豪華客船の船旅を楽しみながら海をみてジョギングする気分。中にはボクシングのスパーリングをする自衛官もいる。12月8日からは氷山も見え始めた。今日は、どんより曇り、時おり雪がちらつく中を走った。さすがに走っていたのは5人くらいだった。