20.冷凍ウェアラブルカメラ

 越冬隊での活動に対してズームを使って聞き取りをしてはどうでしょうかと提案された時、すぐに思い浮かんだのは、活動を予めウェアラブルカメラで撮影しておき、それを僕が見た後でインタビューするという方式だった。僕に越冬経験があるならともかく、越冬中の活動がどのようなものか想像が付きにくい中、的確な質問をするのは難しい。もともと「現場で何を考えているか」を聞きたかったので、現場が分からなければ抽象的な質問しかできない。もし行動中の画像があれば、それを元に、随分と突っ込んだ質問をすることもできるだろう。これはエキストリームな領域での活動についての研究の「技術革新」とも言える。

 

 それで行けるということになってからは、どの機種を使うかが問題になった。スタイルやマウントの方法にはそれぞれに個性があるが、録画の長さやバッテリー性能に大きな違いはなかった。もちろん、SDカードを使う機種では、その容量で撮影時間は大きく異なる。しかし、同一のカードを使えば撮れる時間には大きな差はない。まあ考えてみれば当たり前だ。

 

 撮影してくれる隊員は、それぞれの任務のために屋外に出るのだし、だからこそウェアラブルカメラで撮影する意義がある。だから隊員の負担はできるだけ減らさなければならない。できれば外に出るときに録画ボタンを押してもらって、その後は録りっきりという形にしたい。であれば、録画時間は長い方がよい。その時間の制約条件になっているのは、実は媒体の容量ではなく、バッテリーだということに気付いた。夏期間ならともかく、越冬中の南極は零下20度は軽く下回る。日本の冬でさえデジカメのバッテリーの持ちは悪いのだから、零下20度であれば、推して知るべしだ。高所クライミングの写真撮影で有名な方に伺ってみたら、「クライミングとかスキーだったら、3分くらいで済みますから」とにべもない。

 

 あれこれ考えて、結局選んだのが、これ。カメラ部分とバッテリー部分が別になっている。これならバッテリー部分を保温しつつ、撮影することができる。我が家の冷凍庫(-18度)で実験したところ、保温なしの状態でも2:40の撮影が可能だった。これでも許せる範囲だ。保温しながら撮影したら、3:20の撮影ができた。胸の中に入れれば、更に長い時間撮れそうだ。上出来である。

こちらは、バッテリー部分を保温。